2023.09.04

TEDx要約:抗生物質耐性菌を標的としたファージ療法

marugotoyoten

アメリカンフットボールコーチであるポール・ターナーが「抗生物質耐性菌を標的としたファージ療法」について語りました。この動画の要点と要約をまとめました

スピーカー

ポール・ターナー

専門分野:スポーツ
経歴:アメリカンフットボールの指導者として活躍

３つの要点

要点１
抗生物質の発見は感染症との戦いにおいて重要な突破口である。
要点２
広範かつ不必要な抗生物質の使用は抗生物質耐性を引き起こす。
要点３
抗生物質耐性を克服するためには新しいアプローチと解決策が必要である。

要約

抗生物質の発見と抗生物質耐性の台頭
1928年、アレクサンダー・フレミングは偶然の発見をし、医学の進歩に大きな影響を与えました。彼の研究室で細菌を研究している最中、彼はペニシリウムという菌が培養物中の細菌を殺していることに気付きました。これが最初の抗生物質であるペニシリンの開発につながり、人間や動物の細菌感染症の治療に使われるようになりました。抗生物質の発見は感染症との戦いにおいて重要な突破口でした。これらの強力な薬物は細菌を殺したり増殖を抑制したりすることができ、無数の命を救ってきました。しかし、広範かつ不必要な抗生物質の使用は新たな問題、つまり抗生物質耐性を引き起こしました。時間の経過とともに、細菌は抗生物質の効果に対抗するためのメカニズムを進化させてきました。これにより、抗生物質に耐性を持つ細菌、いわゆるスーパーバグが出現しました。これらのスーパーバグはすべての既知の抗生物質の効果に耐えることができるため、非常に治療が困難です。抗生物質耐性は深刻な世界的な健康危機です。放置されれば、死因の主要な要因の一つになると予測されています。この問題に対処するためには、抗生物質を責任を持って使用し、必要な場合にのみ使用することが重要です。さらに、抗生物質耐性を克服し、将来の世代を守るために新しいアプローチと解決策が必要です。

ファージ療法の限界
抗生物質の代替治療法を探る中で、科学者たちはファージ療法の利用を研究してきました。ファージは細菌に感染し、殺すことができるウイルスです。ファージ療法のアイデアは、これらのウイルスを使用して細菌感染症を標的とし、破壊することです。ファージ療法は有望な治療法である一方、限界も存在します。細菌は抗生物質と同様にファージに対しても耐性を進化させる能力を持っています。つまり、時間の経過とともに、ファージ療法の効果は減少し、細菌がファージに対して耐性を持つようになる可能性があります。ファージ療法は、抗生物質が細菌感染症の治療に失敗した場合に最後の手段として使用されます。これらのケースでは貴重な選択肢となることがありますが、限界と細菌耐性による治療の失敗の可能性についても認識することが重要です。

抗生物質耐性を克服するための生物学的なアプローチ
自然界からインスピレーションを受けた科学者たちは、抗生物質耐性の危機を克服するための革新的な解決策に取り組んでいます。その一つのアプローチは、細菌を殺すだけでなく、細菌に進化的なトレードオフをもたらすファージを見つけることです。つまり、ファージは細菌を効果的に殺す一方で、細菌を他の要素に対してより脆弱にするのです。ファージは細菌の特定のタンパク質を標的とすることで、細菌を抗生物質に対して鈍感にすることができます。つまり、細菌は抗生物質の効果に対してより耐性を持たず、既存の薬物の効果を再び活性化させることができます。この生物学的なアプローチは、抗生物質耐性との戦いにおいて希望をもたらします。

ファージ療法の未来
ファージ療法は多剤耐性菌による感染症の治療において大きな可能性を秘めています。すでにスーパーバグ感染症を持つ入院患者に対して成功裏に使用されています。しかし、ファージ療法の潜在能力を十分に理解し、活用するためにはさらなる研究が必要です。臨床試験は、特定のファージが特定の細菌感染症に対して最も効果的であることを示すために必要です。この個別化されたアプローチでは、特定のファージを特定の細菌感染症に対して最も効果的なものとして特定することが含まれます。ファージ療法の未来は明るいですが、抗生物質耐性の危機に対して探求し、新しい解決策を開発し続けることが重要です。自然界からインスピレーションを得て地球の生物多様性を活用することで、この世界的な健康課題に立ち向かう革新的な方法を見つけることができるでしょう。

▼今回の動画