2023.09.08 2023.09.23

TEDx要約:抗生物質耐性危機

marugotoyoten

アイリーンイスクラが「抗生物質耐性危機：基礎科学の救援」について語りました。この動画の要点と要約をまとめました

スピーカー

アイリーンイスクラ

３つの要点

要点１
抗生物質耐性危機は深刻であり、年間1000万人の死亡を予測している。
要点２
抗生物質の過剰使用と誤用が主な原因であり、改善が必要。
要点３
新しい抗生物質の開発は減少しているが、MscLを標的とした研究が進展しており、有望な解決策となる可能性がある。

要約

グローバルな抗生物質耐性危機
抗生物質耐性危機は、深刻なグローバルな問題であり、多くの懸念を引き起こしています。毎年、70万人が抗生物質耐性により死亡し、この数は年間1000万人の死亡に上昇すると予測されています。細菌は自然選択により耐性を獲得することで、抗生物質の効果が低下しています。細菌は急速に増殖し、遺伝子情報を伝達することさえできるため、問題はさらに悪化しています。手術や化学療法などの医療手続きには抗生物質が不可欠ですので、それらが効かなくなると壊滅的な影響が出ます。

抗生物質の過剰使用と誤用
抗生物質危機の主な原因の一つは、抗生物質の過剰使用と誤用です。驚くべきことに、販売される抗生物質の80%は、病気の治療ではなく、混雑した工場畜産条件下での動物に使用されています。動物には成長促進のために低用量の抗生物質が与えられます。人間の使用では、抗生物質は不必要に処方されることがよくあります。実際、処方箋の30%は不必要です。緊急治療施設でも、呼吸器疾患に対して処方される抗生物質の46%が不必要です。これらの命を救う薬を守るために、抗生物質の使用方法を改善する必要があります。

新しい抗生物質の必要性
過去30年間、新しい抗生物質の開発は大幅に減少しています。製薬会社は抗生物質への投資に興味を持っていません。なぜなら、抗生物質は使用範囲が限られており、市場に出すのに高額な費用がかかるためです。しかし、基礎科学研究はこの危機の解決に役立つことができます。科学者たちは、メカノセンシティブチャネルオブラージコンダクタンス（MscL）という潜在的な抗生物質の標的を発見しました。このチャネルは、力に応答して開き、溶質の放出を可能にし、緊急時の生存を保証します。このチャネルを変異させることで、細菌の死亡や成長の遅延を引き起こすことができ、新しい抗生物質の有望な標的となります。

抗生物質研究の進展
研究者たちは、特定のMscLを標的とし、このチャネルを持つ細菌を殺す化合物の同定において、重要な進展を遂げています。これらの化合物は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、結核に対して効果があります。さらに興奮すべきは、これらの化合物が非増殖細菌を殺す潜在能力を示していることです。非増殖細菌は治療が非常に難しいとされています。さらに、これらの化合物は他の抗生物質の効果を高めることができ、細菌への浸透を助けることができます。継続的な研究と協力により、数百万人の死亡の予測を防ぎ、抗生物質耐性危機に対する解決策を見つけることができると期待できます。

▼今回の動画